長谷川恒男カップ 参戦記 (日本 最厳の耐久レース)

Modified at January 24, 1997

第4回日本山岳耐久レース(24時間以内)「長谷川恒男Cup」へ参加した時の感想をまとめたものです。(1996.12.15)

Goal

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レースの概略 - レース翌日の感想 - なぜ参加したか - これまでの取り組み

前日 - 当日の様子

スタート - 前半 山へ入るまで - 浅間峠(第一関門)まで

避難小屋で休憩 - 月夜見の休憩 - 御前山まで

最終関門 - 日の出山 - ゴールへ

感想(数ヶ月後)

私のペース - ヘッドランプの話 - カッパの話

コーステープの話 - エネルギー補給の話 - ソックスの話

下り坂の話 - 水のはなし - ビタミン剤のはなし

左手人差し指がつった - リタイアは恥ずかしくない

夜行生物 - 装備 - レースで得たもの

来年参加しようと考えている人へのアドバイス

試走報告No1, 試走報告No2, 試走報告No3

レースの概略

距離:72Km

コース:五日市を出発して、山へ上り尾根に出たらひたすら尾根道を進み、時計回りにぐるーと一周 再び五日市まで戻ってくる。中間地点は奥多摩周遊道路の月夜見第二駐車場。

五日市 - 醍醐丸峠 - 三国峠 ー 浅間峠 - 笛吹峠 - 槙寄山 - 三頭山 - 月夜見第二駐車場 - 御前山 - 大岳山 - 御岳山 - 日の出山 - 五日市

<車で奥多摩湖へ遊びに行った人に判る説明>

車で五日市から奥多摩湖へ向かうと両側に山が迫っています。その左側の山の尾根道を走ります。

奥多摩周遊道路 月夜見第2駐車場で道路を横切ります。そこから、奥多摩湖から青梅へ向かう時、右側に見える山の尾根道を走ります。詳細は地図を見てくれー。

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今の感想

今日は、14日 レースの翌日です。

72Km走るといっただけでも大変なのに、夜の中・山の中・雨の中・泥の中、本当に泣きたくなるレースが今回初めて出場したの長谷川CUPでした。

とにかく厳しいレースでした。 肉体的には、佐渡トライアスロンAタイプ完走+α、精神的には3倍位の体力(耐力)が必要です。完走Tシャツにはサバイバルレースと誇らしげにプリントされていますがこれは真実です。

今日の朝、会社なんて休んじゃえよーよいう邪心に負けずに会社へ向かう後ろ姿を妻は「うちのおばーちゃんみたい」といと笑ってましたが、そのくらいダメージが残っています。ふくらはぎ・ひざ・腰・背筋・肩、ボロボロです。さいわい怪我といった痛みは無く、とりあえずトレーニングの成果はあったなといった感じです。

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なぜ参加したか

その1:

昨年の秋、トライアスロンのレースシーズンも終わり、山小屋1泊で丹沢山へ行きました。その山小屋で知り合ったおじさんが、酒を飲みながらこのレースの話をしてくれました。トライアスロンをやっていると耐久レースの話を聞いてもあまり驚く事はないんですが、このレースは出場しても完走できないだろうと感じました。いやな性格でこういう話を聞くとメラメラと燃えてくる物があるんですね。そういえば、トライアスロンを始めるときも、こんな感じだったなーと思い出します。

その2:

昨年買った雑誌に、このレースの記事が掲載されていました。山小屋で会ったおじさんが言ってたレースだ!と思い出しました。 このときには、もう次の大会に出場することを決意していました。

雑誌に乗っていた大会事務局へ電話をして、申込方法を聞き、その年の参加要項を送ってもらいました。参加できるのは先着順で1000人とのこと。トライアスロンで選考になれてしまっている私には、すごく新鮮に感じました。

申込用紙を入手する為に、私のHP200LXにはしっかりとスケジュールを入力したのでした。

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これまでの取り組み

このレースへ参加しようと考えてから、トレーニング方法も変えました。まず、ランニングの強化です。これまで走った最長距離は、高校の時の強歩大会です。48Kmを3年間走りました。それ以降はトライアスロンでのフルマラソンです。 どう考えても山道を72Km走る足はできていませんでした。

このレースに備えて、週末のランニングは少なくても3時間、長い時は6時間のトレーニングを行いました。

それと同時に力を入れたのは、脂肪を燃やせる体作りです。これにはマフェトン理論を参考に、エアロビクス領域でのトレーニングを行いました。

それから、コースの試走を行いました。これについては別記報告します。

もうひとつ、装備の選択には気を使いました。これらの装備もコースの試走で実際に使用して確認を行いました。

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前日

レースの前日は、運悪く広島に住んでいる友達が東京に出てきました。5年ぶりの再会なので断るわけにはいきません。飲み会を開くことになってしまいました。

早めに飲みはじめて、早々に家へ帰ろうと思い当日は会社を午後半休してのぞみました。が、飲み始めると終わるのはなかなか難しく、家へ帰ったのは12時です。

妻はかんかんに怒っています。(じつは前の週も飲み会のことでケンカしたばかりでした。) うるさい! つべこべ言うな!! と心の中でさけんで 今日は静かにしていた方が良いとさっさと睡眠に入ったのでした。

飲んだおかげで、レースの事を考えて寝付けないということはありませんでした。

ただし、当日ちょっと残ってしまって....

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当日の様子

当日、スタート場所である五日市には電車で向かいました。試走の時に車で出かけてその度に渋滞に巻き込まれました。混んでいて座れないと悲しいですが、交通手段は電車がベストです。

南部線で立川が近づくとそれっぽい人が増えてきました。少しづつ気持ちも盛り上がってきます。五日市線では、乗車客の半分以上が選手・サポートの人です。

五日市駅でちゃんとトイレを済ませ、スタート場所になっている小学校で受け付けをしました。

受け付けでは、荷物検査があります。このレースでは、必ず携帯しなければならない装備が義務づけられているのです。これが無いと受け付けを通りません。その理由はレースが終わると十分理解できます。今回のレースでも指定されている装備がひとつでも欠けていると、本当に遭難の危険がありました。

<義務つけられている装備>

受け付けを済ませて、ゼッケンを付けます。一応、参加者名簿を確認しよーとペラペラと自分のゼッケンを探しました。ん...無い、私のゼッケン番号には知らない人の名前が載ってます。よーく探すと十数人下に私の名前があります。

ゼッケンと参加者名簿の番号が違うよー。係員に質問に行ったところ参加者名簿の方が間違っていることを確認してひと安心です。

ゼッケンを付けて、携帯物を確認。靴の紐を締め直して準備ばんたんです。が、ここで妻とひともめありました。携帯する荷物にTシャツを持っていくかいかないかで意見が分かれたのです。 リュックの中は、食料など携帯物でいっぱいです。とてもシャツを入れる余裕はありません。私は、「ずーと走ってるんだし要らないや」という思いが強く、持っていきたくありませんでした。しかし妻は、防寒具の少なさを心配しとりあえず持っていきなさいと、リュックの外側へくくり付けてしまいました。カッコ悪いなーと思いながら仕方なく持っていくことにしました。このTシャツのありがたさは、中間地点の三頭山の避難小屋で知ることになりました。

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スタート

30分位前から市長や来賓の挨拶が始まりました。わたしは、あんまし話に興味は無いので無理矢理誘って参加したH・O氏,サポートの妻と話をしながら、どんな人が参加するのか観察です。

佐渡トライアスロンの帽子やデイバックを持っているひとが数人(へんにハデで目立ちますよね、これ)、いかにもトライアスリートという人も目に付きます。フルマラソンに物足りなくなったウルトラマラソンの人たちもたくさん見えます。とりあえず出てみようかという軽いノリの若者達。他に気になるのは怪しい山関連の人たち(ニッカポッカに重登山靴という人も見かけました)。 このレースの位置づけがエベレスト挑戦への登竜門なので山人が多いのは当たり前ですが、私から見れば見慣れない種族なのでちょっと興味津々観察しました。

これらの人を見分けるのは、まず履いている靴です。山の人はほとんどがトレッキングシューズです。ランニングシューズを履いていて少し派手なのがトライアスリートです。

また、このレースの参加者独特なのがストックとリュックです。これはマラソン・トライアスロンどちらにも無い持ち物です。山登りの人と違うのはストックと荷物の量(かなり少ない)ウエアです。まだ何がベストかは模索状態の混沌とした様子はなかなか面白いものがあります。装備に成功したかどうかは24時間後に答えがでます。

10分前にグランドに並んで、スタートに備えます。400mトラックの直線部分にゼッケン順に並びます。H・O氏はちょっと緊張ぎみです。

これから72Kmの耐久レースが始まるのかと思うと私はなんとなくワクワクです。その後こんなに厳しいレースになるとは何も知らずに...

時計の針が3・2・1分となると周りもそわそわし始めます。しかしトライアスロンと違うのはスタートの前に、掛け声・気勢をあげる人がいないことです。

午後3時、ピストルの合図と共に山へ向かってスタートです。

いくぞ!!


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前半 山へ入るまで

事前の情報では、「スタートからの4Kmが勝負だ。」と聞いていました。山道へ入ると、前の人を追い越すことが難しいのです。私は、スタートと同時に走り出しました。このレースでは心拍計を付けて、これをペースにする予定です。通常は150心拍以下、急な上り坂でも160心拍以下が目標です。

この目標からすると、山へ入るまでは高くても150台で行きたいところです。が、回りにつられて、走る・走る チョット早すぎのペースです。 心臓バクバク、心拍計は 160〜170 を示しています。普通のレースではないのに、回りのペースに巻き込まれてしまうのはまだまだ修行がたりません。

ここで頑張った成果は、山へ入る部分(急に道が細くなる)で渋滞に巻き込まれることは無かったこと。マイナスの成果はこのあと思い知ることになります。

(写真は、「山道を走る はでなおじさん。」トライアスリートかランナーでしょう。)

はでなおじさん

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浅間峠 (第一関門)まで

スタートから浅間峠までは約22.66Kmの距離があります。制限時間は10/13 AM1時です。

トライアスロンの最終ランでは、10Km/hのペースで走れても(私はもっと遅い)山道では、3Km/hというのも珍しくありません。時間で距離を見積もるのは難しいところがあります。

この間も、いくつかきつい上りがあります。 標識には、次のポイントまでXKmと表示されています。この距離が3Kmを超えるとすーごく長く感じます。とりあえずの目標が浅間峠です。でもそこを超えても先が50Kmもあるのですが、それについては考えないことにします。

所々で、足がつって動けない人が出始めています。それを横目で見ながら自分の体調を確認します。ここではまだまだ余裕です。

山へ入って2時間も立つと暗くなってきます。ヘッドランプの出番です。これから朝までの間これが頼りになります。

周りが暗くなり少し心細くなったところへ、追い討ちをかけるのように雨が降り始めました。

今度はカッパの出番です。とりあえず上着だけ着用して 前へ進みます。

私は、このレースに向けてコースの試走を4回行いました。走っていないのは、スタートから浅間峠までと、御岳山からゴールまでの間です。でもこれは失敗でした。スタートから浅間峠までは、非常にハードなコースです。ここは、試走するべきでした。

きつい上りが多い上に、雨が降ったことでコースが泥道になってしまいました。ランニングシューズで参加した人は、滑ってしまって普通には登ることができません。木につかまりながら、足元をよーく確認して登ることになります。

逆に下り坂は、普通に下ることができません。ちょっと気をゆるめると大転倒です。

側から見ていてかわいそうになります。

私は、足回りに関しては(多分)最良の装備で望めました。靴はナイキのトレールランニング用シューズです。 このレースの為に通販で購入しました。(サイズが合うかちょっと心配でしたが) ランニングシューズに比べたらぜんぜん滑りません。多分トレッキングシューズと同じ位の性能が出ています。 また、トレッキングシューズに比べてすごーく軽いです。これはランニングシューズに近い性能です。

もうひとつ重要な装備はストックです。これもこのレースに備えて石井スポーツで購入しました。ストックの威力が一番発揮できるのは泥の下りです。スキーと同じように使いながらバランスを取りながら駆け下ります。上りで抜かれても、泥の下り坂でゴボウ抜きです。(これ、ホンとですよ)

こんなコースがずーと続くかと思うと気がめげてきます。が、浅間峠までは順調に進みました。(12日 20:25 浅間峠 着)

浅間峠には、ちょっと大きな東屋があります。でもこの中は休憩している人でいっぱいです。私は、チェックだけを済まして休まず三頭山を目指しました。

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避難小屋で休憩

浅間山から三頭山までは、試走をしています。きつい部分も判っています。が、私が試走したのは、晴天の日中です。夜中・雨のコースはぜんぜん別物でした。

雨は降り続いています。その上ガスが出てきました。視界はますます悪くなります。足元はますます滑りやすくなります。

この位の距離を進むと選手もばらけてきます。回りに光が見えない事も長くなります。「うちのやつ(妻)はいまごろあったかい布団の中で寝てるだろーな」と思うと涙が出そうになります。もしかしたら泣いてたかもしれません。でも雨の中なのでだーれもわかりません。回りに人もいないからよけいにわかりません。かわいそうでしょ!

こんな感じで、走り(歩き)つづけました。頼りにするのは、心細い光とコースを示す黄色いビニールテープです。

三頭山の頂上直下に避難小屋があります。このあたりがちょうど中間点になります。ここで初めて長い休憩をとりました。

走りながら休憩する時は、靴を脱いで中のゴミ出そうと思っていました。靴の中にゴミが入ってごろごろしているのはやなもんです。避難小屋に着いて、靴を脱ごうとして唖然としてしまいました。靴から足首にかけて泥が隙間無く張り付いています。泥をのかしながら紐をほどきました。もっとびっくりしました。靴の中はスッゲー泥だらけです。スパッツ(冬山で雪が入らないように足に付ける物)を付けている人がいましたが、その意味がやっとわかりました。このレースでは、泥が入らないようにする為に使っているのです。

それから、妻が用意してくれたTシャツを着ます。(持ってきて良かったと思いました。) カッパの下もはきます。

体を動かさずに休んでいると、急に身体が冷えてきます。手がかじかみ始めます。「これはやばいぞ」と思い、急いで出発です。三頭山の頂上はもうすぐです。

この地点ではかなり元気がなくなっていました。もし、ボランティアのおじさんか選手の人に「チョット顔色が悪いですよ」と言われたら多分リタイアしていたと思います。

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月夜見の休憩

三頭山へ着くと、(13日 1時10分 着)ボランティアのおばさんが「ベンチがあるから休めますよ」とやさしく声をかけてくれました。 天気の良い昼間なら ありがたく感じるのでしょうが、このレースでは「おばちゃん何言ってんの」という感じです。夜中・雨の中・風の中でベンチに座って休んだら、あっという間に身体が冷えてしまいます。これは非常に危険な事なのです。やさしい気持ちだけを受け取り、ノンストップで月夜見の第2駐車場を目指しました。

三頭山がこのコースの最高地点(1527m)です。ここまでは上りの足が必要です。そしてここからは下りの足が必要になります。

月夜見第2駐車場は、奥多摩周遊道路の頂上付近にあります。山道から周遊道路に下りて周遊道路を200m位登ると駐車場があります。しかし、ただでは周遊道路へ下ろしてはもらえませんでした。このレースで最悪の泥沼・急坂が待っていました。この場所だけはストックもあまり役にたたず、すべりまくりです。距離にしたら数十メートルの短い区間ですが、滑ってころんで泥だらけになってしまいました。

月夜見第2駐車場がレースの第2関門です。ここで水またはエネルゲン2Lの補給が受けられます。スタート時に用意した3Lは200cc位残っただけでした。これは計算通りです。

1時間位前に休憩したばかりなのになんだか調子が出ません。体力的にはまだ余裕があるのですが、「どこかおかしーぞ・元気が出ないなー」 といった感じです。ここで妻が用意してくれたビタミン剤を思い出しました。これを飲んでスタートです。駐車場の奥に御岳山へ続く登山口があります。ここからもながーい下りが続きます。この下り坂が今回最大の転倒場所です。この坂道は、前回の試走の時も滑りやすくチェックしていた場所です。当然ストックをいっぱいに伸ばし身体を支えながらゆっくりと下ります。坂の途中で休もうと思い前へストックを伸ばして身体を支えました。でも、あまりの急坂に体重を支えきれず、足がズルズル滑っていきます。ストックを突いているところより、足が前へ進んだら一気に転倒です。ギャーと叫びながら、そのまま5mくらい滑落しました。雨の中・泥の中・だーれもいない真っ暗な夜中の山道で、滑って転んでいる所を思い浮かべてください。悲しくなりますよほんと。。。

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御前山まで

小河内峠から御前山までは、急な上りが続きます。この頃は夜明け前の一番暗い時間です。私が使っていたリチウム電池使用のヘッドライトの光が弱くなってきました。「もうすく明るくなる時間だ、富士フィルムの広告を信じればまだ電池は持つはずだから我慢しよう」と無理をして進んでいました。しかし、足元が見えないと気分も沈みがちです。体調もよくないし弱気になってきます。

あまりの暗さに、いざ電池を交換しようと思っても、暗闇で手探りで交換はできません。たまたま後ろからきたおじさんが「ライト暗いね、照らしてあげるから電池交換しなよ」と言ってくれました。実は、おじさんも電池切れで、交換中に明かりを照らしてくれる人を探していたのでした。お互い照らしあいながら無事電池交換が終わりました。 明るい明るい、気分も明るくなります。こんなことならもっと早くに交換するべきだったと反省です。電池交換をして、1時間もしないうちに空が明るくなってきました。この頃には、雨も止み星も見えてきました。良い天気になりそうです。

夜明け

御前山の頂上へ着くとビタミン剤の効果か、やな感じも無くなってきました。

大ダワを通る時は、完全に明るくなりました。良い天気です。ここで一晩お世話になったカッパをたたみました。でも泥だらけなので、裏返しにして他に泥が付かないよううに気を使います。

大岳山では、(13日7時40分 着)たくさんの人が休んでいます。もう急な上りはありません。あと数時間身体を動かしつづければゴールかと思うと、元気が出てきます。近くで休んでいる参加者と写真を撮り合うくらい余裕が出てきました。

もうちょっとだ、がんばれー。

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最終関門

大岳山荘を過ぎると、最終関門の御岳山までは比較的緩やかな下り坂です。私は走りと歩きの中間位のスピードで前へ進みます。クロスカントリースキーの人と同じようにストックを使い、体を前へ押し出しながら進みます。そして最終関門の御岳山へ到着です。この時間になると普通の登山客もちらほらと見え始めます。

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日の出山

御岳山・日の出山(13日 9時24分着)・金毘羅尾根は緩やかな下りが続きます。この道は、走り(歩き)やすく、ペース良く進めます。が、すでに60Kmを乗り越えてきた身体には長い距離です。

コースには、残りの距離が表示され始めました。あと10Kmと出ていると、「あと1時間ちょっと頑張ればゴールだー」と自分をはげまします。五日市の町並みも見えてきます。距離表示が減ってきて、残3Kmの表示を過ぎ10分くらい走ったところに、おばちゃん5人が応援していました。「ゴールまでどのくらいですか?」と聞くと、「その先曲がって、300mくらいだよー」との返事です。この時、佐渡トライアスロンを思い出しました。ランの最後に応援の人に距離を聞くと、短く答えた方が元気が出ると思っているのか、スゴーク適当な短い距離を教えてくれる事がありました。「だまされないぞ!」と思い、「おばちゃん、ほんとー!!」 と聞くと、「ほんとーヨ、すぐあの先よ!」と指差して教えてくれます。

本当でした、疑ってごめん。おばちゃんの指差す方向へ、左折して、右折して目の前にゴールが待ち構えていました。

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ゴールへ

ゴール

やったー!! 72Km 完走です。長い・長い・辛い・つらいレースがやーーと終わりました。(13日11時36分 ゴール着)

早く、家に帰ってお風呂へ入って暖かい布団で眠りたいよー。

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感想

もうレースが終わって2ヶ月が過ぎてしまいました。長谷川CUPは、これまでのレースの中で一番厳しいレースになりました。私が知る限り、日本で一番厳しい耐久レースだと思います。(もし、これより厳しいレースを知っていたら教えてください。)佐渡トライアスロンと比べても、肉体的には2倍・精神的には3倍くらい厳しさを体感しました。

レースが終わってしばらくは、来年のこのレースについては考えたくありませんでした。しかし、今はまた出たい気持ちがムズムズとしています。たぶん参加を申し込むでしょう。今は、来年このレースをかっこ良く駆け抜ける自分を夢見ています。

でもいくら夢見てもだめなんだよね、夢見てないで走らなきゃー強くなれん。酒ばかり飲んでないで、走らなきゃー強くなれん。 てな訳で、年のせいにしないで・忙しさのせいにしないで、これからも私なりにがんばろーと思います。

それではこれで終わり。

完走証

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私のペース

95年レースシーズンが終わってから、マフェトン理論に基づくトレーニングを積んできました。

平地でのランニングは140台でこなしています。これが私にとって一番効率的な強度になります。これ以上の強度だと、脂肪を燃やすことができなくなります。

山道の場合、急な上り坂はゆっくりと上っても160を超えてしまう事があります。心拍を150以下に保ことは、意外と難しいことなのです。

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ヘッドランプと電池の話

私は単三電池が2本入るヘッドランプを購入しました。電池は富士写真フィルムのリチウム電池です。メーカーの説明によると、この電池を使えば12時間は使えるはずです。この電池を使えばレース中の交換は必要ありません。

うそばっか!!」 実際は8時間〜9時間で終わってしまいました。闇の中、やられたーと思いながら、アルカリ電池へ交換しました。それまでは、「12時間もつはずだから、もう少し我慢しよう」と思いながら進んでましたが、暗くて見えないと気持ちも沈んでくるものです。電池交換は早めにするのが重要だと感じました。

今回使用したヘッドランプでは、明るさもちょっと足りないといった感じです。ハロゲンランプが欲しくなります。

明るければ、電池寿命が短くなる。 -> たくさん電池を持参する必要がある。

暗いと、足元が良く見えない。-> 走る気持ちも萎えてしまう。

どこで妥協するかが問題です。

ヘッドランプは頭が痛くなると聞いていたので少し心配でした。しかし、今回は頭が締め付けられて痛むことはありませんでした。(けっして石頭なわけではありません。)

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カッパの話

上着だけカッパを着た私

カッパは、ゴアテックス素材の物を使用しました。レース中はかなり汗をかきます。ビニールのカッパだと、中が汗でびしょびしょになってしまいますが、ゴアッテックスはさすがにすごいです。汗をどんどん外へ吐き出してくれます。

今回使用したのは、IBS石井スポーツのオリジナルレインウェアですが、\20,000.-以下で入手できます。

ちょっと高くても、ゴアテックスは買いです。

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コーステープの話

ほぼすべてのコース上に黄色のビニールテープ(新聞紙を束ねる時に使うアレです。)が張ってありました。このおかげて道を間違えることはありませんでした。しかし、あんまし頼りすぎると危険です。テープは道に近い木に巻きながらはってあります。道が崩れている先に木があり、そこにテープが張ってあることもあります。テープだけを頼りにすると崩れた道から滑り落ちる危険もあります。私は大丈夫でしたが、多分テープを頼って滑り落ちた人は、片手では足りないとおもいます。

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エネルギー補給の話

当然のことですが、エネルギー補給はとても重要です。自分の体を理解して定期的に補給する必要があります。私の場合、運動を初めて1時間30分後から補給する必要があります。それから、30分間隔でこまめに補給します。これをレースが終わるまでずーと続けます。

補給食は、On The Go, エネルギーイン,Power Gel,カーボショッツとおにぎりを交互にとりました。おにぎりはお腹にたまるので長いレースには意外と良いのです。

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ソックスの話

今回使用したソックスは、Ultimax Running Mini Crew Socksです。 IRONMANと刺繍のある物です。このソックスは正解でした。少し厚めなのでゴミが入ってもあまり気になりません。いつも使用している薄めのソックスだと、小さなゴミでも気になってしまいます。

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下り坂の話

あまり山上りの経験が無い人は、上りのほうが大変だと思いがちです。しかし、山でつらいのは下り坂なのです。上りの足は、普通の生活である程度きたえられています。私は、トライアスロンのトレーニングでやはり鍛えられています。なので、意外と上りは登れてしまいます。しかし、下りに使う筋肉は上りとは別物です。下り坂になれていないと膝が笑ってしまいます。笑うのはすぐに通りすぎて、激痛に変わっていきます。レースの最後の方では、下り坂を後ろ向きになって歩いている人が何人もいました。そのくらい大変なのです。このレースに出る人はまず、下り坂でのトレーニングが必要です。

もう一つ、下り坂で足の負担を減らしてくれるのがストックです。このレースには必需品であると痛感しました。急な上りでは、長さを短くして4本足で上ります。ちょっとした下りでは、スキーと同じように使いながらバランスを取りながら駆け下ります。急な下りでは、長さをできるだけ長くして身体を支えます。ストックを持っている人と持たなかった人の差は、この下りで大きく現れました。

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水のはなし

レースにどのくらいの水を用意するかは、非常に重要な問題です。水が無くなったら脱水症状で身体が動かなくなります。余裕をもって多く所持すれば、それだけ荷物が重くなります。

水の重要性については、トライアスロンの経験から認識していたので、試走段階から消費量を計測していました。その結果出た予想消費量が、上り3L・下り2Lです。

この計算は見事に的中しました。月夜見で残った水は200cc位、ゴールで残った水もほとんど0でした。

もし、このレースに出場を考えるなら、山道での自分の水分消費量を知っているべきです。

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ビタミン剤のはなし

ビタミン剤の効能について、これまではあまり信用していませんでした。しかしレースの中盤におとづれた調子の悪さは、(たぶん)ビタミン剤のおかげで助かりました。

水分・食料ともに十分補給しているのに、なんだか調子が悪いという自覚症状は初めての経験でした。たまたま持っていた(妻に無理やり持たされた)ビタミン剤を補給して、いつのまにかこの"やな気持ち"が無くなったのです。

もっと早い時間から定期的に補給すれば良かったと思いました。これは反省材料です。

ちなみに補給したビタミン剤は OverDRIVEです。

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左手人差し指がつった

耐久レースでは、レースの最中にいろいろな現象が体に現れてきます。今回のレースで初めて経験したのは、左手人差し指がつった事です。

避難小屋での休憩を終わり、三頭山へ上り始めてた時、ストックを持つ左手人差し指の異常に気がつきました。自分の意志では、グリップを握れないのです。指の筋肉がつってしまい、反り返っています。あわてて、右手でつった指をもとに戻しました。

ストックを使うことで、かなり手の指にも疲労がたまっていたようです。このレースでは、指の耐久力も必要です。

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リタイアは恥ずかしくない

トライアスロンやマラソンのレースでは、リタイアする人はあまりいません。10%を越えるリタイア者が出れば、すごく多い数です。

しかし、今回の長谷川CUPのリタイア数は50%を越えました。このような状況だと、リタイアに対する参加者の意識がトライアスロンやマラソンとは異なります。

トライアスロンやマラソンでは、リタイアする事は「恥ずかしい」といった気持ちが大きいと思います。これは、リタイアする人が少数しかいないという事もあります。しかし、長谷川CUPでは半数以上がリタイアするので、この部分で「恥ずかしい」といった気持ちは少なくなります。

それにもっと重要なのは、「無理をしてレースを続けたら危険」なのです。体力が尽きてしまい動けなくなったら遭難の危険もあります。また、途中リタイアしても、回収車の走っている場所へ下りるのに1時間位かかる場所もあります。

このような状況を考えると、「大丈夫か? まだ余裕はあるか? 無理してないか?」と、常に自分の体と話しをしながらレースを進める事が大切なのです。 自分の状況を把握してリタイアできるということは、このレースに参加する上では必要な事なのです。

長谷川CUPでは、リタイアするということは恥ずかしいことではありません。

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夜行生物

レース中に2つの夜行生物と遭遇しました。

ひとつは、リスのような小動物です。浅間峠から避難小屋へ向かう道で、私の3m位先を横切っていきました。

ふたつめは、たぶんもっと大きな動物です。これは、三頭山から月夜見へ行く途中で私の後ろを横切りました。ガサガサという大きな音だけの遭遇です。

普段は静かな山も、長谷川CUPの時だけはにぎやかになります。きっと動物達もビックリしていると思います。

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装備

  1. 食料:
  1. 雨具:IBS石井スポーツ(横浜)オリジナル ゴアテックスレインウェア。\20,000.-以下でゴアテックスが入手できた。良くできている。
  2. 地図 :日本山岳耐久レース '96公認マップ)
  3. カメラ :コニカ Big mini。ちょっと古い型だが、小さくて役に立ってます。
  4. ストック: LEKI Super MAKALU。これは良かった。アンチショック付きです。
  5. シューズ: NIKE Air Terra Torr。シューズは、トレールランニング用にするべきです。(写真は使用後)
  6. ソックス:Ultimax Running Mini Crew Socks
  7. リュック: ULTIMATE Direction Nimbus。容量は少し少なく感じたが、フィットは最高である。これも正解だった。
  8. ヘッドライト: (富士写真フィルム リチウム電池2本含む)
  9. 電池:アルカリ電池4本

(レース後のシューズ。すごいだろー)


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レースで得たもの

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来年参加しようと考えている人へのアドバイス

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