ラグナプーケットトライアスロン参戦記

平野大祐・やす子(平野2号・3号)

Modified at January 24, 1997

ちょっと遅い新婚旅行を兼ねて、タイはプーケット島で行われた '96 ラグナプーケットトライアスロン(来年のハワイアイアンマンの予選も兼ねている。International Triathron Grand Prix (ITGP) も同時開催)に参加してまいりました。以下は、海外レース初参加の我々夫婦の珍道中記であります。


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〈10月9日〉

 成田集合は10日 8:00 なので、今日中に成田について1泊する予定である。(長野)志津男さんからアイアンケースも貸りたしバイクの調整もしておいたから、後はちょちょいとパッキングして愛車のカリブで成田のホテルへ…、と思っていたら、普段ははずしたりしないネジやペダルをはずすのに手間取ってしまい、結局、パッキングに2時間もかかってしまった。ふうっ。でも出発してしまえばこっちのもの、湾岸線経由で2時間もかからずに成田のホテルに到着。でも、ちょっくら忘れ物が心配な平野2号・3号であった。

〈10月10日〉

 ホテルのバイキングで2人で4人分の朝食を食した(たいして練習もしないのに食う量だけは人並み以上の2人)。愛車はホテルに残し、アイアンケース2個と決戦ホイール('95 筑波5時間耐久、'95 象潟トライアスロン、'95 袋井エンデューロと大雨の中激走したスピナジーホイール、別名:雨降らし)を伴い、いざ成田空港へ。ところで、私、平野2号は海外レースはおろか、海外旅行も行ったことがない。元来気の小さい私は緊張しまくり、動きがぎこちない。一方、海外レースは初めてなれど海外旅行に行き慣れている妻、平野3号は楽しくて仕方ないらしく、恥ずかし気もなくロビーで踊り狂っている。

 今回の旅行は、これまた志津男さんからの紹介でグッドウィルツアーという会社のツアーなのだが、ツアーコンダクターの武藤さん(この方もトライアスリートである)は、なかなかそそっかしい人である。このツアーは、10:00 フライトと 11:00 フライトの2グループに分けて出発だったのだが、何を勘違いしたのか 10:00 フライトのチケットが、11:00 フライトの我々のところに来ていた。しかも、武藤さん(10:00 フライト)はそれに気づかず出国手続きの列に並んでしまっている。幸い、ゲートの手前で正しいチケットを武藤さんに渡すことが出来、事無きを得た。武藤氏危機一髪ってやつですね。

 我々も、11:00 の便で一路バンコクへ。タイ人スチュワーデスの腰つきが艶っぽいなあ…なんて思いながら機内食を頬張り、約6時間のフライトでバンコク国際空港へ現地時間の15時頃到着(時差は日本時間−2時間)。上空から見るバンコクは、「水田の中に都市がある」といった感じの街である。バンコクからプーケットまでは再び1時間のフライトである(日によっては成田〜プーケット間の直行便もある)。バンコクは平地の中の街であったが、プーケット島(プーケットはタイで一番小さな市で、かつ、一番大きな島である)が近づくにつれて山が多くなってきた。バイクコースがちょっと心配になってきた。

 プーケット空港に着くと外は雨であった。妻は、「雨降らし(私のスピナジーホイール)のせいだ!」と、わめいている。今回も、雨中の激走となるのか?空港では、現地のエージェントがポーターを伴って我々を迎えてくれた。空港からホテル(シェラトン・グランデ・ラグナ・ビーチ・ホテル)までは車で20分。途中通る怪しげな町並みがなんとも東南アジアっぽい。特に、商店の看板の色使いは独特なものがある。ホテルでは、チェックインの間にウェルカムドリンクのサービス。かなりエキゾチックな味付けのレモンスカッシュが、外国に来たことを感じさせてくれた。フロントから客室までは電気自動車で荷物共々つれていってくれる。さすがに、シェラトンだけあって部屋は広くて快適。狭い社宅の部屋ではでかく感じたハードケース2個が、部屋の片隅にぽつんとあるという感じだ。明後日のレースへの気合いも入ろうというものだ。

〈10月11日〉

 朝はゆっくりと寝て、ホテルのビュッフェで朝食。西洋人向けのリゾートだけあって、パンの種類がやたらと多い。今日はエントリー手続きとバイクコースの下見(ツアーでバスをチャーターしてくれている)の日である。9:30 に下見に出発。今回のレースは来年のハワイの予選も兼ねているので、バスの中にも一種独特の緊張感が漂っていた。それだけ狙ってきている人が多いということだ。そういや周りのどの人も黒く日焼けして強そうな人ばかりである。リゾート地を抜けて、田圃の間の道を通って幹線道路を北上して新しく出来た国道へ入って…、と思いきや出来ているはずの国道がない。明日のレースどうするの?!すると、バスの前の方の座席に座っていたトライアスリートの一人がやおらレース案内の冊子を取り出す。聞けば、今朝、エントリー手続きをしてきたばかりとのこと。

その冊子によれば、バイクコースは新国道の手前で左折してゴム園の中をぐるりと大きく一周してからくねくねと方々を迂回して戻って来るコースに変更されていた。前日になってバイクコース変更?!日本じゃ考えられないぜ!とにもかくにも、冊子に記載されているコースにしたがって下見を済ませ、途中、タイ式の寺院を観光してからホテルに戻る。

 休憩後、シェラトンの隣のホテル(と言っても船で行く)近くの建物までエントリー手続きに行く。ところが、あんまり敷地が広いのとエントリー手続き場所の具体的な地図が付いていないためなかなか場所が解らない。結局ずいぶん遠回りをしてやっと見つける。

エントリー手続きを兼ねてポーラー社が「フィジカルフィットネステスト」というのをやっていて、身長・体重、血圧、安静時心拍数(さすがポーラー)、握力、皮下脂肪、肺活量を計られる。二人とも異常なし。良かった、良かった。

 17:00 最終ルール説明会。ここで、再びびっくり、なんと2回目のバイクコース変更。今度は、かなりすっきりとしたコースになって空港の横をかすめてほぼぐるりと1周するだけ。本当に距離は合っているのかいな?それにしても、日本人が多いな。470 人余りの参加者中、日本人はなんと 106 人。タイ人だって 21 人しかいないっていうのに。ルール説明も英語、日本語、タイ語の3ヶ国語で行っていた。

 18:30 から、パスタパーティー。ところが、味が口に合わず余り食べられない。今から思えばこの時点ですでに身体に変調をきたしていたのかも知れないが、当時は知るよしもない。エイジグルーパーとして来ていたポーラ・ニュービーフレイザーのスピーチを聞いて、すぐにホテルに戻る。何となく食いっぱぐれた感じを残して、就寝。でも、明日は頑張るぞー!

 〈10月12日〉

 レース当日。レーススタートは 8:00 なので、普段は 6:30 からしか開いていないホテルのビュッフェが今日は5:30 から開いている。さすがの我々も少し朝食の量を控えてレース準備に取り掛かる。といっても、スタートは我々の泊まっているシェラトン・グランデのビーチからなので時間的には余裕がある。ところが、ここで第一のトラブル発生。部屋でバイクのタイヤに空気を入れていたら、突然「ドーン!」という大音響。あれれ!フロアーポンプのチューブが破裂している。こりゃ困った。急いで武藤氏の部屋へ行ってポンプを借りる。何だか最初から波乱含みの予感だぜ。とにかくまずは、バイクでバイクトランジットまでラン・バイクのグッズを置きに行く(トランジットはシェラトン・グランデの隣のホテルなのだが、バイクで 10 分くらいかかる)。トランジットはバイクラックがずらりと並んで、それにおおまかな(40 人一まとめくらい)場所分けがしてあるくらい。いたってシンプル。各々が決められた範囲内で好き勝手にバイクを置いている。シェラトン・グランデに戻っていよいよスイムスタート地点へ。しかし、ここで第二のトラブル発生。今回のタイム計測は足首部分にセンサーをマジックテープで止めて行うのだが、スイムのウォーミングアップ中に海の中でセンサーが外れてしまった。

この時点でなんとスタート 10 分前。急いでオフィシャルの所へ行って、”I lost my time checker in the sea. Would you give me another one? ”と、通じるかどうか怪しげな英語で言ってみたらこれがびっくりすんなり通じて、すぐに別のものをくれた。”Have a good race! ”とか言っていたので、”See you at next year's Hawaii Ironman Race. ”と言ったらバカうけしていた。どうせ俺はそんなに早くないよ!

  ITGP が、まず、8:00 にスタート。マーク・アレン、サイモン・レシング、マイク・ピグといった日本でもお馴染みの世界の強豪が、一斉に海に飛び込むとあっという間に見えなくなってしまった。やはり世界のトップは違う。5分遅れて、ラグナプーケットトライアスロンスタート!400 人以上が一斉スタートだったので、最初のポジション争いが結構激しい。ましてや周りはほとんどが屈強の西洋人なのだ。見る見るうちに後ろに下がってしまった(スイムが遅いせいもあるんだけどね)。外国の大会らしくブイも少ない。大体 100 m おきくらいか?キックを打つ度、足のセンサーがはずれそうになって気が気でない。ここのスイムコースは変わっていて、海を 1130 m 泳いだ後に一回岸へ上がってからラグーン(要するに沼です)をさらに 370 m 泳ぐことになっている。海にいる間は塩濃度が高いせいなのか身体の重さは感じなかったが、ラグーンに入ってずしりと身体の重さを感じるようになった(このレースは水温が高いのでウェットスーツ禁止)。さらに、水が汚く前がよく見えないので、あっちこっちと蛇行してしまう。1 m 前の人の足も見えるかどうかと言った感じだ。結局ラグーンの中はブレストで泳ぐ(目標が必ず見える)のが一番速かった。

 ほうほうの体でスイムを終えると、バイクに飛び乗る。路面は思ったほど悪くない。52 X 17 のギアを 95 rpm でと思っていると、横をスーッと外国人の一台のバイクが抜いていく。しかし、どう見ても回転が遅い。見るとアウタートップでゴリゴリと優雅に踏んでいる。「さすが肉食ってるやつはパワーが違うぜ!」と思ったがみすみす抜かれるわけにもいかない。回転をさらに上げて必死に食い下がるが、ただでさえバイクの遅い私は哀れずるずると引き離されてしまうのでした。バイクコース上のエイドはたった一ケ所、29 km 地点である。紙コップではなくゲータレードのボトルに入ったミネラルウォーターを渡してくれる。レースそっちのけでスピードを極端に落として慎重に受け取る。ちょっと得した気分。コース全体は小刻みなアップダウンはあるものの、比較的平坦でスピードコース。日本でいえば宮古島みたいな感じか? ただし、前半飛ばし過ぎて後半足に来ていた人は多かった。

 いよいよラン。ここで抜き返さないとボロボロの順位だもんね!と思っていたんだけど、日差しの強さが身体に相当ダメージを残していたのか?身体がだるくペースが上がらない。しかし、身体の重い外国人はランが不得意らしくよたよたしているのでどんどん抜くことができる。照り付ける太陽に頭がボーッとなりながらも、確実に順位を上げていけた。1 km 毎に設けられたエイドでスポンジを受取り、頭を冷やしながらペタペタと走る。

リゾート地を抜け、砂利道の上をあっちこっちと複雑にくねくねと曲がり、再び舗装道路の上に出ると”Last two hundred meters! ”と、沿道から聞こえてきた。最後くらいは格好良くと思って、ここでペースをちょっと上げる。最後の直線 100 m を一気に駆け抜けフィニッシュ!2時間30分位だったと思う(正式なリザルトはまだ出ていない)。ゴール後、9 km のエイドまで妻を迎えに行く。妻の方は、苦手のランにこの暑さがかなり応えたらしく、なかなか姿を見せない。待つこと 45 分、ようやく妻が重い足取りで現れる。エイドの水を頭から3、4杯かけてやりながらゴール直前まで並走。妻も3時間35分位で無事完走。海外初レースを、二人で何とか無事に終えることが出来た。

 夕方のアワードパーティーではマークアレンの引退表明という悲しいことがあったが、かなりゴージャスな雰囲気の中でリラックスした一時を過ごすことが出来た。日本人では3人が来年のハワイの出場権を得ていた。

その翌日、突然の腹痛を平野2号を襲った。夜になると平野3号も吐き気を催し、結局帰国するまで症状は改善しなかった。つまり新婚旅行とは言え、レース以外何もしなかったのである。平野2号にいたっては成田で検便までされてしまった。みなさんも特に海外では体調管理に気を付けてください。ちゃんちゃん!


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