技術を磨けば今の体力のままスピードアップできる

著:井出 和範

楽な走りと、効率の良い走りは同じではありません。楽な走りとは、単にエネル ギーをできるだけ使わないように体を動かしているにすぎません。
効率的な走りとは、使うエネルギーは同じでも、より速く進めるようにと体を動 かしていくことです。
人によって楽な走りの方法はさまざまです。 腰を落として、膝を曲げて走るのが楽な人もいるはずです。 膝を上げて走れば、スリ足で走るよりエネルギーを使います。
しかし、それは筋力で膝を上げようとするからです。腰を高く保つ場合も同じ。 体力頼みでそれらを実行すれば、その分エネルギーが余計に必要です。 だから技術なのです。
膝を上げる、腰を高く保つ、といったことを体力ではなくテクニックで行うのです。 そうすれば、体力は現状維持のまま、スピードアップができます。
今ある自分の力をもっと有効に推進力に使えるようになること、それがランニン グの技術練習の目的です。


腰で足を運べば筋力的負担が小さくなる

競歩を見ると、「腰で走る」とういテクニックがよく理解できます。
競歩の様に、足裏が地面から離れないようにと膝を深く曲げる必要はありません が「歩き」で腰の使い方を研究してみるといいと思います。
その際、腰の動きを3段階に分けて意識してみます。

  1. グッと腰を入れて歩いてみる
  2. 腰の左右の振りを強調し、腰を使ってストライドを伸ばす感覚をつかむ
  3. 腰を左右にローリングさせるだけでなく、上への動きを加え、足を引き上げる

最終的には腰の動きで、足を前へ出し膝を引き上げるテクニックを「歩き」の中 でマスターします。
このテクニックを歩きで試しみれば、同じ歩きでも腰が引けているといかに筋力 が必要かがわかります。 走りでは歩き以上に、腰が引けた状態だと脚力に頼って、足を出さなければなら なくなるのです。それが、腰を先行させた走りでは、自分の体重すらキックに利用 することができます。 腰を使った走りならそれだけエネルギーを有効に使えると言うわけです。
腰というのは、大きな走りをする時は誰でもある程度は使っているものです。 とこるが、ジョギングやロングディスタンスになると走りが小さくなってしまい ます。 腰を使うことを忘れて足首や膝で走ってしまうのです。
小さな走りになってしまうのは、動きを合理的にして疲れないようにするためだ と思います。 確かにそれはそうなのですが、腰を使わない小さな走りではスピードが出ません。 スピードを上げると筋肉に負担がかかるからというのは腰を使わない場合。 腰をうまく使った走りなら小さな走りと同じエネルギーで、スピードアップをす ることができます。
歩きの中で腰の使い方を練習したら、次にスローペースのランニングの中で充分 腰を使った走りを練習して下さい。


スプリントトレーニング


もも上げ走

目的:大腿部の筋力の強化

方法:膝を出来るだけ高く上げ一歩一歩大腿部に負荷を感じながら、タッタッタ ッタッのリズムで走る。
前に速く進もうとすると大腿部に負荷が軽くなってしまう ので出来るだけ足の踏み替えは速くするが前進はゆっくりを心がける。


スプリンギング

目的:足首、アキレス腱、ふくらはぎの筋肉の強化とストレッチング

方法:チョーン、チョーン、チョーンと、片足ずつ交互にその場跳びのようにして地面を蹴り腕を大きく振って、へそ(重心)をまっすぐ上に持ち上げるつもりで真上に高く跳び上がる。
ポイントは足首のバネをきかせ、つま先で地面を押し切り 、真上に体を引き上げるように跳び上がること。着地はつま先からで、着地後カカ トをつま先より低い位置にくるように引き下げカカトに体重をかけ、アキルス腱が しっかりと伸びるのを感じながら、また足首のバネをきかせつま先でキックする。 前に進もうとするのではなく、とにかく重心を上へ、上へ、高く、高く、を意識する。
正しく出来ていると、はじめのうちはほとんど前に進まない。
足首の動きの感じをつかむには片足だけでやってみるとよい。余裕がでて きたら蹴り上げた方の膝も高く上げるようにする。
足首の他に気を付けることは、腰を高い位置に保ち上体をリラックスさせ ること。 キックした瞬間、その脚の膝を伸ばすこと。


バウンディング

目的:ストライドを伸ばし、キック力を強化する。

方法:4〜5m助走し、勢いをつけ腕を前後に大きく振り、足首のバネをきかせ 、弾みながら走る。ポイントはつま先で地面をしっかり押し切ると同時に、その膝 をグーンと伸ばし腰をグイと前へ入れ、ひきつづき前脚の膝を高く引き上げる。
鹿が柵を飛び越えるイメージで、ポーンポーンポーンと体を斜め前方に運ぶ感じ。


ストライディング

カカトでお尻を蹴るようなつもりで、足をお尻の下に引きつけ、お尻の真下を 通過させた後足を前に放り出す感じで、膝から下を前に大きく振り出す。
はじめは歩きながら、正しい足の運びを覚える。 それが出来たら次はスキップ、それから走りへと移行していくとよい。


ラントール

人が見てもなかなか違いが分かりにくいのだが、とにかく自分の身長を実際よ り高く見せるようなつもりで走る。
走る前につま先立ち、頭のてっぺんを真上からロープで引き上げらるイメージ をもち上体を骨盤から引き上げお尻が胴体の真下にある感じを確認し、その感じを キープしながら走る。


スプリントトレーニングの方法

まず、もも上げ走、スプリンギング、バウンディング、ストライディング、ラ ントールの5種類のドリルを同じ距離のジョギング、または歩きでつないで各2本 づつ行う。
1本の距離はできれば50m、はじめはフォームがくずれない範囲で行い除々 に距離を延ばしていけばいい。
つづいて、100mをできるだけ速く走っては3分間または300mジョッグ 、これを6〜8本繰り返す。始めのうちは2〜3本から行い除々に本数を増やして いく。
ポイントは先のドリルで強調した動きをひとつにまとめて、自分の体になじま せるようなつもりで、全身をリラックスさせ、速く走る。
特に意識してほしいのは、膝を高く引き上げることと、背を高く見せること。 トラックで行う場合は、第1コーナーから第2コーナーまで軽く助走をし第3 コーナーまでスプリント。第4コーナーまで軽く流して第1コーナーまでジョッグ という要領で6〜8周(はじめは2〜3周)回る。
また、5種類のドリルを補強運動として行うだけで、その日の走りが良くなる。 年中、本練習とは別の時間にこのトレーニングを加えると、誰でも楽に走れる ようになる。


室内で行える補強運動


レッグランジ

レッグランジ〔下半身の内側・裏側〕のトーレーニング
30回を3セット

@まっすぐ立ち、頭の後ろで手を組む。胸を張り肘は後ろへ引く。
A左右交互に前方に踏み出しては引きつける。
(踏み出した足のカカトと、後ろ脚の膝との間隔は1足半以上)
(胸を張り腰を十分に落とす)
(踏み出したとき、親指どうしは1直線上に置く)
(元の位置に戻すときは、前足を蹴るのではなく後ろへ引きつける)
Bウエイトのない分スピードで行うことを心がける。


4点支持

4点支持(腹筋、背筋を中心とした全身のトレーニング)
5回を2〜3セット(身体を支えた状態で3秒静止)

@手、脚とも肩幅より広めに開いて伸ばしうつ伏せに寝る。
(爪先を立てて構える)
A手、脚が伸びきった状態で身体を持ち上げ、数秒間維持する。
(出来ない人は、手をやや手前について構え、その位置から身体を持ち上げる)


プローンボディアーチ

プローンボディアーチ(背筋のトレーニング)
手、脚を浮かせた状態で5秒を5回2〜3セット

@手、脚を伸ばしてうつ伏せに寝る
A背中を反るようにして、手、脚を浮かせてそのまま数秒間維持する。
(肘、膝は伸ばしたまま)


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